ヤれない事情2

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 優人はやっと難問が解けた生徒のように微笑んだ。 「ってことは、俺がそのワクチンの接種をうければいいの?」 「注射、三回ですけど」 「なんだ、できるんじゃん」  優人はこわばっていた顔をゆるめた。誠一郎はあいかわらず、目隠しをしたままだ。眉のあいだに深い溝が刻まれている。 「ユートさん、恐く、ないですか」 「なに? 注射? たしかに三本は多いけど……子どもじゃないんだし」  苦笑しながらいう優人に、誠一郎は苦悩の色濃い声をしぼる。 「ちゅ、注射じゃなくて。……僕が、恐くないですか。こうやって近くにいるの、ぞっとしませんか」  優人はぴたりと笑うのをやめた。 「なにいってんの?」  真剣な顔になった。誠一郎のハンカチをおさえている手も震えていた。唇の隙間から、浅い息がもれる。誠一郎は必死で恐怖と戦っている。 「そんな病原体みたいな奴と今まで食事してたって考えると、恐くなりませんか」 「え……」
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