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「竹林くんさ、七年前に俺を指名してくれたじゃん。あの日、四年間つきあった彼女にふられたっていってたよね。彼女にプロポーズするつもりだったって。それまで全然手を出してなかったって。ひょっとして――今のことをうちあけたの?」
誠一郎は泣きながらうなずいた。
「それで、うまくいかなかった?」
またうなずく。
「もともと、僕が手を出してこないのが情けなくなって、よその男に浮気もされてたみたいなんですが……この話で決定的にふられました。そりゃ、こんな話突然きかされたら、びっくりするだろうけど……でも僕は、正直に話せばきっとわかってもらえるって信じていました。
でも、ダメでした。たとえ今後つきあったとしても、将来、結婚して、出産して、そのときに我が子に父子感染させないように気をつかって……周囲の目も気にして……そんなことして生きていくのは、自分には無理だって彼女にいわれました」
はは、と誠一郎は泣きながら笑った。
「四年間、誠意を持っておつきあいして、かたい信頼関係を築いてきたつもりでした。でも彼女には逆効果だったみたいで『なんで四年間も黙ってたの。幸せになれると思ってたのに。これじゃだまされたみたいだ』って責められました。
僕だって、早くうちあけたいです。でも先入観ってあるじゃないですか。世間には『不特定多数とのセックスしたからかかる病気』みたいにさげすむ人もいるし。ちゃんと僕の人柄を知ってもらえれば、そんな壁をきっと乗りこえられるって信じてたんです。でも現実はそんなに甘くないって思い知りました。……もう、なにもかもイヤになりました」
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