ヤれない事情2

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「んん、今日は洋食の匂いがする」 「あ、昨日ビーフストロガノフを煮たんです」  説明しながら、誠一郎は指先で優人の触れた部分に、そうっと触れている。まるでそこに火傷でもしたかのように。 「それが今日のメインなの?」 「いいえ。メインはオムライスで。ストロガノフはソースですよ」 「うわ、贅沢」  優人は誠一郎をふりかえった。 「そんなに頑張らなくてもいいのに……」 「僕が楽しいんですよ」 「オムライス、好きだよ」 「そんな気がしてました」 「俺がガキっぽいから?」 「無邪気だからです」  ぽんぽんといいあって、自然に静かになった。なんとなくみつめあっていると、優人はふたりの間の距離が気になってしまう。  恋人同士なのだから、愛しいと思ったらすぐに近づいて、触れられるはずなのだ。でも今はまだ遠慮と我慢がある。
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