ワクチン二本目、三本目

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「じゃあ、寄りかかります?」  誠一郎が優人の肩を抱くように手をまわしてきた。自分の肩にそっと優人をおしつけようとする。そんな誠一郎の彼氏めいた行動が、優人は愛しくもあり、どこかおそろしくもある。 「竹林くん、みんなにそういう目で見られちゃうよ」  誰にも聞こえないように小声でささやく。 「かまいません」  誠一郎の手に力が入る。優人を守ろうとしてくれているようで、嬉しくなる。 「でも、もうすぐ実家の近くなんでしょ」 「もうちょっと距離ありますけど」 「知ってる人が乗ってくるかも」 「僕はそれでもいいんです」 「だめだよ」  優人はさりげなく誠一郎の腕をほどいた。 「だめ。悲しむ人がきっといるから」 「手をつなぐのも、ですか」  残念そうに誠一郎がこぼす。 「ふたりだけになったら、ね」  こころもちしょぼんとした誠一郎に、おだやかに笑いかけて優人はゆっくり目を閉じた。もうしばらくすると山梨県下吉田にある誠一郎の実家に着く。
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