805人が本棚に入れています
本棚に追加
誠一郎はどんどん減っていくキャベツの山をみつめた。マヨネーズが細いヒモのようににょろりとかかっている。それを彼の箸がかきまわして、重機のようにすくいあげ、口にはこぶ。あれがなくなったら、彼の食事は終わりだ。
誠一郎の身に現在進行形で起こっている「再会」という奇跡も、そこで終わってしまう。
そう考えたとたん、誠一郎は憤然と食事を始めた。彼の食後の一服が終わる前に、自分も食べ終えてしまおうという勢いだった。
食事を終え、目を細めて食後の一服を堪能する彼は、文句なしに幸せそうだった。
「ん? なに、俺の顔になんかついてる?」
笑いジワをつくったまま、面白そうに誠一郎にたずねる。
「いえ、うまそうっすね」
ふふ、と笑う口元から、ふわと紫煙が漏れて周囲をただよい、誠一郎の頬をなでる。
「うん。うまいの」
うっとりと微笑む様子は、飼い主の膝でくつろぐ猫のようだ。満足そうな顔は、男性だというのに、このうえなく可愛らしかった。そして彼があのユートであることを、誠一郎は確信した。
最初のコメントを投稿しよう!