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エリゼベートは、俺に問いかけたのにも関わらず、返事も聞かずにガゼボに向かっていく。俺も、仕方なくその後ろを付いていくのだが、どうやらヘルゼの言葉を聞いてから、完全に意識してしまっている状態らしい。何故なら、俺の視線は前を歩く彼女の体に釘付けになってしまっているからだ。
ガゼボに着いた俺達は、そこに用意されていた椅子に座っている。俺は、何を喋ったらいいのか分からない状態だった。何せ胸を見て、しばかれて以来の再開な訳で、とても気まずい雰囲気なのだ。
「この中庭、凄いよな!川も流れてて、花も沢山あるし!」
それ故に、苦し紛れの会話だった。
「ふ、ふん!見たら分かるでしょ!?グリムの城と一緒にしないで!」
「……。」
(こ、こいつ!?いきなり話の腰を折りやがった!)
「ご、ごめんなさい……。」
「!?……べ、別にいいよ。本当の事だしな。」
(お!?いつものワガママ娘と思ったけど、そんなこともないか?)
「ううん。今のは私が悪かったわ……。」
「……。」
(調子狂うな……。)
「……。」
「エリゼベートの、その病気っていうのは大丈夫なのかよ?」
「エリゼ……。」
「え?」
「前助けてくれた時は、エリゼって叫んでくれてたわ。」
「……。え、エリゼは、その……大丈夫なのかよ?」
(病気そっちのけかよ?お前の命かかってんじゃないのか?)
「じゃ、じゃあ今から吸血させてもらうわ。」
「わ、分かった。」
俺は、準備するため椅子から立ち上がる。
「座っててもらえる?」
「え?だってこの前、立ったまま吸ってたじゃんか?」
「びょ、病気の時は、その方がいいってお母様が言ってたのよ!!」
「そ、そうなのか?何の病気か分かんないけど、色々大変なんだな。じゃあ、座るぞ。……よっこらしょ。」
「フフフ……。グリムっておじいちゃんみたいね。」
「あ、いや今のは……!」
(し、しまった~!油断し過ぎてしまった!昔の俺が、出てしまうとは……。でも、こいつってこんな感じに笑うんだな……。)
「な、何よ!?」
「いや別に……。」
(ちょっと、可愛いと思ってしまっただけだ。)
「じゃあ私も、よいしょっ。」
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