第4章 『破壊魔法』デモリション

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曇天の朝。今にも泣き出しそうな雲は、どうやら我慢強い子みたいだ。でも、悲しいことは我慢出来るみたいだけど、お腹の音は止められない食いしん坊さんみたい。 こんな天気の日は、大抵の人は残念そうな言葉を口にするだろう。 でも私は、そんな空が好きだ。 それは私の先祖の血が、そうさせているのかもしれない。 元々ヴァンパイアは、日光を浴びれば死んでしまう種族だったそうだ。魔法やスキルの存在が発見され、『日光耐性』のスキルの出現により、ヴァンパイア達は光の下でも生きていける種族となった。 そんな曇っている日には、私のテンションがいつも以上にあがるはずだったのに、今日も気分が上がらないままだった。 それは、1人の少年と出会ってしまったせいだ。 彼と出会った日から、全てが変わってしまった。 その人物の声や顔を思い出すだけで、心拍数は上がり、また胸が熱く苦しくなる。景色や花を見るときの感情も変わり、鏡の前に行っては髪を整えたり、お風呂の時間はいつもの倍も時間がかかってしまうようになった。ついでにため息も……。 これも全ては、『純粋吸血』のせいだ。 吸血を済ませたあと、母から「私の血を一度口に含んでみなさい?」と言われて軽く吸ってみた。その味はとてもじゃないが飲めたものではなかったのだ。まるで錆びた鉄と、腐った乳製品を混ぜ合わせ、嘔吐物を上からかけたようなヒドイ味だった。すぐさま私は、その場に吐き出してしまう。それからしばらく、口をゆすいでも、ご飯を食べても、その味が消えないのだ。当然のように、私は何度も吐いた。1日トイレから動けないほどに、唾液ですらそのヒドイ味がしてしまうのだ。 だが、彼の血は別物だった。 この世に、こんな美味しいものがあるのかと思う程に美味しかった。あの味を脳が欲して、その事ばかり考えてしまうほどに、それは依存性が高かったのだ。 こんなにも『純粋吸血』が、厄介なものだとは思いもしなかった。 そんな『純粋吸血』は、太陽の下で暮らせるようになった、先人のヴァンパイア達の数千年にも及ぶ、進化の結晶なのである。
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