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日光を浴びて生活していく内に、【継承スキル】に『日光耐性』と『水分保持者』を取得する者がちらほらと出現したのだ。前者は言うまでもない。後者の出現で、血でしか喉の渇きを満たせなかったのだが、そのスキルにより、ヴァンパイア族は水でも喉を潤す事が出来るようになったのだ。
大半のヴァンパイアが【継承スキル】を手に入れることで、『その日』がやってくる。
【継承スキル】を持つ吸血鬼達は、血を飲むことに怠け、ヴァンパイアの全人口の半数が死んだ日だ。それを『怠慢の月曜日』と言った。死体を調べることで分かったのが、血は5年サイクルで摂取しなければ死に至るという結果だった。
やがて、バレンタインデーは好きな人の血を吸う日となる。ヴァンパイア族の間では、名前も変わって『サッキングブラッドデー』と名付けられたが、長いからと省略され『ブラッドデー』というイベントの日と変わってしまう。
そして、同じ人物からしか吸血しなかったことで、またもヴァンパイアの体質は変化する。初めて吸血した相手以外から血を飲もうとすると、それは生き物が飲める味をしていなかったのだ。
それが『純粋吸血』の誕生である。
ヴァンパイア族に血を分け与えてくれる者を、我々は敬意を込めて『献血者』と呼ぶことにした。何故なら『献血者』は、無償で血液を提供してくれる命の恩人のような存在であったからだ。
しかし『献血者』の中には、悪行を考える者も現れてしまう。血と交換に、金や宝石などを要求する者達だ。そのせいもあり安全の為に、家族や兄妹同士で『純粋吸血』を行う者も増えてしまう。
しかし、恋する乙女は誰にも止められない。
そんな乙女心が選択した道は、細胞を変化することで、相手を欲情させ魅了する体を手に入れる事であった。進化した『純粋吸血』は、『献血者』が頭でも理解していない好みの情報までをも解析し読み取ることで、究極の理想像を忠実に再現する。元々美形であるヴァンパイア族の顔と、理想の体を持った人物に迫られて、吸血を拒む者など1人も出なくなったのだ。
反対に『献血者』が、『純粋吸血』を行うヴァンパイアに求婚を迫ることが激増した。
それこそが、【継承スキル】『純粋吸血』の最終形態だ。
「ハァァ~~……。」
そんな私は適当に選んだ服を着用し、化粧台の前の椅子に座っている。
「どうされました?姫様?」
そんな私の髪をとかしてく話かけてくれるのが、専属メイドであるシルフィーだ。
「ううん……。何でもない。」
「最近ずっと憂鬱になさってますけど?ルシファリス魔王国で、何かあったんですか?」
「……。シルフィーは確か、兄妹で『純粋吸血』したのよね?」
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