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こちらも、同じく驚嘆の声を上げたのは、ダークエルフの守護者であるアッシュ・シュヴァルツだ。3人は、どうやら夜月の話に出ていた赤い笛のことが気になるらしい。
「そうかもしれん……。して夜月よ。その『黒騎士』とやらが笛の音を奏でたと申したな?」
「なんじゃ!? 確かに笛の音は聞いたが、笛を吹いている所は見ておらんぞ? それが一体何だというのじゃ?」
「……どんな笛の音じゃた? 聞かせよ」
「むぅ……そうじゃの。透き通った感じの音……だったかの?」
「ふむ……。可能性は高いようじゃ……」
「一体、さっきから何だと申すのじゃ?」
「悪いが夜月よ。そちの申し出を余は、受ける訳にはいかなくなったぞ」
「何じゃと!?」
「そして、ここに宣言しよう。『黒騎士』を余の前に連れてきた者には、夜月が言いおる100倍の金貨100,000枚を支払うと」
その言葉に全員が驚愕する。金貨100,000枚とは国家予算に匹敵する金額であり、それを1人の人物の為にレフィーナは支払うと簡単に言っているのだ。
(ぐ、グリム!? 次は、一体何をしたんだ!?)
「レフィーナ! 一体その笛がなんだと申すのじゃ!? 何故、お主が妾の邪魔をするのじゃ!?」
「おいおい! 聞き捨てならねぇーな! 何んで、レフィーナが横槍を入れるんだ!?」
「余の、邪魔をすると申すなら構わんぞ? 2人が相手でも、余は一切手加減はせん」
「あ"あ"!? テメェ! それはどういう意味だ!? 俺様に喧嘩売ってるのか?」
「ふ、ふざけるでない! 妾の獲物を、横取り出来ると思おておるのか!?」
「どう捉えようと、そち等の自由にせい」
「テメェ……どうやら、この場で殺されてぇーらしいな?」
「アイザックやめよ! レフィーナ様への、これ以上の暴言はこのクロードが許さんぞ!」
「同じく、このアッシュも黙っていないぞ!」
立ち上がるエルフとダークエルフの王の2人。この会場全体が、魔界の頂点に立つ者達の殺気で埋め尽くされ、一触即発の状況だった。
「黙れ」
しかし、その一言を発する者の殺気によって全ての者が大人しくなるのだ。
魔法は一切使わず、筋力とスキルでのみ成り上がった王。圧倒的な魔力量と、肉体という裏切らない絶対的な力を有した者。その者の放つ殺気は、肉親である僕ですらも恐怖してしまうほどである。
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