第5章 『運命赤笛』ルベルライトオカリナ

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「そんなつもりはないですよーっ! レオさんと私は、同格の存在ですからねーっ? 彼への侮辱は、私自身を侮辱するのと同意義ですよーっ?」 「……」 ピエロは僕の肩に手を置くと、顔を耳元まで近付けて、仮面越しに呟いた。 「他に何か……理由があるんですかねーっ? あはーっ!」 その言葉を聞いた時、感じたことのない悪寒が背筋を駆け抜ける。まるで、何でもお見通しだと言っているように聞こえ、何の変哲もないピエロの仮面が、この時だけは不気味に見えたのだ。 「!」 咄嗟の事で、僕は闘争本能まるだしの獣のように、相手を睨み付け、殺気を放っていた。 「あはーっ!! いい目をしますねーっ! 初めて見せるその目、ゾクゾクしますよーっ!?」 すぐに我に返り、一度視線を伏すと、いつもの表情に戻してから言葉を述べようとする。だが、一度かかった胸のエンジンは、そう簡単に落ち着くはずがない。 「……冗談はやめてください……。それより聞きたいことがあったんですよ」 胸の大きな鼓動を悟られないように、話題を変えて、ピエロに質問をすることにしたのだ。 「あはーっ! 肝心な所でにげちゃうんですかーっ? まぁいいですよーっ! 何が知りたいんですかーっ?」 「黒いフルプレートの少年を、ピエロさんはご存知ですか?」 フルプレートとは、頭から爪先までを鎧で全身を覆っていることを指す。その姿を見ても、中の人物の性別や種族を見分けることは出来ないだろう。 「黒いフルプレートの少年ですかーっ? んーっ? 知りませんねーっ!」 「そう……ですか……」 つい先程の件もあり、何でも知っていそうなピエロでも、知らないことはあるようだ。知りたかった情報とは、その少年のことであった。 「その子がどうかしたんですかねーっ?」 「フルプレートだったんで、顔も見えなかったんですが、恐らくはエルフの10歳くらいの男の子だとは思うんですけど、その少年に愚妹と戦闘中に割り込まれてしまいまして……」 「まさか10歳の子供に、邪魔をされて負けたと言うつもりですかーっ!?」 「まぁ油断もありましたが、そうなりますね……」 「……それで、何故エルフだと思ったんですかーっ? 顔は隠れているのに、耳でも出ていたんですかねーっ!」
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