第6章 『道化悪意』マリシャスクラウン

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聞き覚えのない魔法名を口にする少年は、魔法を発動する手を空に掲げる。魔方陣の展開場所が固定されている魔方だと察知した私は、『最後の悪足掻き』を許してしまった手前、魔法が行使できるように魔力の出入りを自分を護る3枚目の結界以外に許可するのだ。 すぐさま快晴の空に、巨大な虹色の魔方陣が出現したかと思うと、計り知れない魔力を溜め込んでいるのが肌で感じ取れるのだ。 「な、何じゃ……あの巨大な魔方陣は!?」 (それにこの魔力……!? 魔会議事堂で感知したあの魔力と同じではないか!? この小僧……『スリロス 』までも所有しておったのか!?) 魔方陣の中心に収束した光は、少年が腕を振り下ろすと同時に私目掛けて降り注がれた。 降り注ぐ光は、『闘技場』に施されていた『オーソリゼーション・エスクード』の1枚目に差し掛かると、光が結界を徐々に削り取っていくように見える。 すると光が結界を貫通しドームが崩れ去るように消えていくのだ。 「ほぅ……」 (小僧にしては流石と言うべきか、しかし2枚目には届かなんだか……) 少し残念に思えるのは少年も2枚目を突破した魔人達のように、1枚目を一瞬で破壊してくれるかもしれないと心の何処かで期待していたからだろう。 やがて光線が2枚目に差し掛かりる。 (見るに及ばぬであろうな……) そう思うのは彼が魔方陣を展開したのが闘技場の上空であったからだろう。何故なら、闘技場にはまだ3枚の結界が全て健在しており、3枚目は未だかつて突破した者が存在しない"最強の結界"だからだ。 しかし私は予想外の結果が待ち受けていることを予測出来ていなかった。2枚目の結界すらも、その光線は貫通し消し去ってしまったのだ。 「なんと!? 小僧! 期待通りではないか!」 少し嬉しく思うのは娘の運命の相手が期待通りの力を示したからであろう。 だが光線は誰も到達したことのない3枚目を1枚目と同じく数秒でーーーー破壊した。 「な、何じゃ……と……?」 光線は止まることを知らず、私の周りに展開された『オーソリゼーション・エスクード』の2枚目に降り注ぐ。 それは『黒騎士』の少年を閉じ込めた結界。
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