第9章 『暴君帰還』タイラントリターン2

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そんな俺の両隣に座っている2人の兄妹からは、殺気が放たれているのを感じ取れた。それは、右にいるイヴに変身した妹が目に涙を溜めながらこちらを睨んでくるのと、左にいるギルハートがナイフとフォークを力一杯握り締めながら、小声で「あの野郎……ぶっ殺してやる」と連呼しているからだ。 「……」 (ギル兄さんが挨拶してくれなかったのは、ロズワルド兄様がいたからか……) 兄の気持ちを察して、今はそっとしておいてやろうと思うのであった。とりあえず妹に謝るのが先決だろうと謝罪したが、鼻を鳴らしてそっぽを向かれてしまう。 「フンッ」 「……」 「なんだい? メラースはお腹の調子でも悪いのかい?」 テーブルの端から聞こえてきたのは真っ赤な髪をしたマチルダの声だ。料理が運ばれてくるまで暇な俺は、自然と声がする方に視線を移動させてしまう。すると真っ黒な髪をしたメラースの皿の上には、ご飯が半分以上残されているみたいだ。 「ん。ちょっとお腹が痛いの……」 そう言ったメラースは、自分のお腹をさすっている。 「あら? イヴハート・ポデルキアが宿った時も同じことを言ってた気がすわ」 金髪のキャロルは、逆三角形眼鏡の智を指で押し上げながら話す。 「またメラースが妊娠したって言いたいの!?」 母も驚いているようだが、双子の姉と妹も反応を見せる。クロエとシロエは両手を繋ぎ合い、イヴはナイフとフォークをテーブルに落としていた。 「どうかしらね? 1度マルダに見てもらった方がいいかもしれないわね」 キャロルが言うマルダとは、俺達兄妹を育ててくれた乳母である。彼女は助産師や医者の役割を果たしてくれていて、赤ちゃんの俺を取り上げてくれたのも彼女であり、大昔からルキフェル城に仕えている悪魔らしい。 「ふふふ……それならとても嬉しいの」 そんな、メラースは愛おしそうにお腹を撫でるのだ。 「一体何人生むつもりよ!? あ、ちょっと待って『テレパシー』がきたわ……ヘルゼ? ……うん。今ご飯を食べ終えた所だから大丈夫よ?………………それで、どうしたの?」 すると母は電話で通話しているかのように、片方の耳に片手を置くと会話を始めた。どうやら相手は、バートリッヒ魔王国のヘルゼのようだ。 「あら? 氷の女王がこんな時間に何の用かしら?」 「何かあったのかい?」 会話の内容が気になる様子のキャロルとマチルダは、母に視線を送る。 「どうかしらね?……うん……。うん……。はぁ!? それってどういうことよ!?」 母が急に大きな声を出すので、俺も気になって母に視線を送った時だった。
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