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「それで、秘密ですって言ったら疑われちゃったみたいです」
「そうでしょうね」
秘密です、とは。
計算や隠し事など無理そうな彼女には渾身の演技だっただろうに、あっさり見抜かれたとあっては、想像するだけで可笑しくなる。
「で、裏付けが必要だということですね」
「そうです。あの、紹介しろと……。四人で食事会しようと言われてしまって断れなくて……。すみません」
可哀想に、申し訳なさそうな彼女の声は消え入りそうなほど小さくなった。
彼女から見えないのをいいことにニヤリと笑ってしまった。
これは彼らの生の姿をじかに観察する絶好の機会だ。
彼女が聞いてこないのでわざと基本データを教えなかったのだけど、それにしても理想的な試合運びだ。
それでいて無意識という棘の無さ。
迷子はスパイとしてなかなか貴重な人材かもしれない。
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