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香子の旦那は、酔っぱらってはいても、化粧品メーカーの営業マンらしく見目のいい男だった。
僕が到着した時はだらしなく寝ていたが、迷惑行為は調停の行方に関わると告げると、途端に酔いが覚めたように急いで帰っていった。
香子によると、普段は礼儀正しく真面目な男らしい。
酒酔いにかこつけて香子の元にやってくるのは、最後の甘えではないだろうか。
香子と話をしていても浮気相手に嫉妬している様子はなく、むしろ清々しくさえ思っているようにも見受けられる。
妻が自分への執着を見せないことに諦めがつかないのだろう。
旦那に多少の理解は感じるものの、他人の感情論に関わるつもりはないし、もとより調停も深入りしたくなかった。
最近、僕は面倒なことに首を突っ込みすぎている気がする。
吐息を漏らして香子からのメールを削除し、メールの整理を続ける。
最後に残った迷子メールも削除すると、僕は携帯をポケットに仕舞い、仕事に頭を戻した。
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