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約束の七時に仕事を終え、エレベーターを待っていると、同じく退社するらしい人事部長と一緒になった。
「今日は早いですね」
「娘の誕生日でね。こんな時ぐらいはと」
「娘さんはお幾つですか?」
「中学生です。最近は口もきいてくれなくてね」
部長は苦笑いしたあと、僕の左手に指輪がないのを見て尋ねてきた。
「皆川さんは、ご結婚は?」
「僕はまだです。適齢期を逃しつつありますね」
そう答えたけれど、結婚したいとも思っていなかった。
昔、渡米の際に考えなかった訳ではない。
でも当時、香子は仕事でようやく下積みを終えてこれからという時だった。
彼女のチャンスを奪ってでも連れていきたいという強い気持ちがなかったと言えばそうかもしれないが、事情が少し違えば結婚していたのだろう。
でも後悔はまったくしていない。
「うちの社に適齢期の女子社員はたくさんいますよ」
冗談めかした部長の言葉に愛想笑いを返したところで、エレベーターが到着した。
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