微妙な変化

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部長と共に通用口まで来ると、迷子が立っているのが見えた。 壁の陰から顔を出したり引っ込めたりしているのが何とも怪しくて笑える。 ところが、彼女はまだ作業着姿だった。 今日がキャンセルであることはすぐに察したが、僕はその理由に興味を持った。 まず条件反射的に人事労務面で。 それから、僕との約束を回避しようと足掻く彼女の逃げ口上がどんなものか、だ。 「僕はここで。待ち合わせをしていますので」 「えっ?ああ……なるほど」 少し遠目だから誰とは特定できないだろうが、壁からヒョコヒョコ出たり入ったりする怪しい女子社員の姿を見つけた部長はもう一度「なるほど」と含み笑いで頷くと、気を利かせた風に足早に去っていった。 「お疲れ様です」 僕が近づくと、彼女は壁を盾のようにして半分隠れたまま頭を下げた。 いつでも逃げられる体勢は後ろめたさ全開に見える。
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