微妙な変化

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「仕事が終わらないんですか?」 「月末で伝票処理が終わらなくて……。申し訳ありません」 彼女は嘘や演技が下手だから、口実ではなく本当にそうなのだろう。 ただ、時間を遅らせるのではなくキャンセルしたいということに僕の嗅覚が反応した。 というのも、さきほどのエレベーターには、たしか企画本部の中堅クラスの男性社員も帰り支度を済ませて乗っていたから。 細かいことも思い当たるし、仕事の分配がおかしいのではないかという疑問がわいた。 「あなたの他にその担当は?」 「私だけです」 やはり。 女性が一人しかいない部門にはありがちだ。
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