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昼休みになると教室は更にうるさくなりそうだと思った俺は、昼のチャイムと同時に屋上へ向かった。
鍵がかかっているだろうからクリップで開錠しようと、教室から勝手にクリップを盗ってきたのだが、俺の予想に反し普通にノブが回って少し拍子抜けした。
だが扉を開くとそんな考えはどこかに吹き飛んでいった。
目の前には目が痛くなる程の明るい世界が待っていた。
心が弾む音がして、俺は息苦しい箱の中から外へと踏み出す。
ふわっ
心地よい風が俺を歓迎し、温かい日の光が俺を包む。
未体験の解放感に自然と心が高揚する。
空を見上げると視界に広がるのは雲一つない広大な青空。
その景色を阻むものは何一つ存在せず、狭い箱から飛び出した俺に自由を感じさせる。
目を閉じて視覚からの情報を切ると、別の自由が待っている。
聞こえるのは風の音と鳥の鳴き声。森の近くにあるこの場所には、日常的な生活音は届かない。
俺だけ一人別世界に来たように感じる。
空を眺めながら作ってきた弁当を食べた。
いつも入れている卵焼きだが、青い空の下で食べることも手伝って、いつもよりおいしく感じた。
弁当を空にした後に、横になって空を眺める。
青い空を時折小鳥が飛んでいく。平和だ。
ポカポカ陽気が眠気を誘うが、ここで一度寝てしまったら夜の冷え込む時間まで寝続けてしまうだろう。
昼の授業をサボる訳にもいかないため、俺は必死に眠気に耐える。
それでも気持ち良すぎてうとうととまどろみ始めた俺の視界に広がる青空を、白い二つの影が横切った。
二羽の鳥だ。
ぴったりと寄り添い合いながら羽ばたいている。片方は小さいためまだ子供だろうか。であれば片方は親か。
子供は親に遅れまいと必死に飛び、親は子から決して離れないように一定の速度を守って飛んでいた。
微笑ましい光景だ。
同時に、羨ましい光景でもある。
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