屋上は夜がいい

2/8

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「寒っ」 自己の身の危険を察したらしい俺の本能が、俺を目覚めさせた。 春といえどまだ寒い。長時間屋上なんかにいれば風邪くらいすぐに引く。ましてや今のような夜であればなおさらだ。 俺の本能は極めて優秀に働いてくれたと鼻をすすりながら感心する。だが、俺はそんなことはどうでもよいことだと気づいた。 ……夜? 横になっている体を起こし、何故だか痛む首を動かして俺は空を見た。 …暗い。 …? なぜ? 俺が最後に見た景色は爽快な青い空と仲良く飛ぶ二羽の親子鳥だ。 それがなぜ星が瞬く綺麗な夜になっているのだ。 真っ先にある一つの可能性が浮かんだが、俺はそれを口に出す前に頭の中で否定した。あれほど注意していたのだ。この可能性は断じてない。 「いやー、よく寝てたねー」 ……………。 やはり寝過ごしたようだ。 まぁ、普通に考えれば原因はそれしかない。頭では理解しながらも否定したのは自分のだらしなさを認めたくなかったからである。 「ハァ…」 ため息は自然と出た。 それもそうだろう。明日から俺はどうすれば良いのか。     
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加