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「やっとやめてくれたよー。いつまで人を幽霊だって決めつけてお経読むのさ!流石にちょっと辛かったよー!」
床にへたりこむ俺を見下しながら、彼女は少し怒った様子で話す。
俺はただ見惚れていた。
これほど綺麗な高校生はテレビでも見たことがない。
制服を着ていなければ高校生だとはまるで思わなかっただろう。
俺の耳鳴りはまだ止んでいなかったが、不思議にも彼女の声はしっかりと捉えることが出来た。
「…あ、ごめんなさい。俺本当に幽霊とか苦手な人で…気分を悪くさせてすいません」
「うんうん、ちゃんと謝ってくれたから、私も君を許してあげよう!」
あっさりと俺の非礼を許してくれた彼女は俺に手を差し出す。
その行動の意味はすぐ分かったが、俺は求められている行為に少しばかり抵抗があった。
「ほれ、仲直りの儀!早くー」
彼女は手をずいっと俺に近づける。
仲直りは言葉でしたからいいじゃないですか?と言うと彼女は俺を視線で殺せそうな程睨んできた。
どうやら拒否権は無いようだ。
俺は諦めて仲直りの儀を行う。
差し出された彼女の手は透けるように白く、華奢で、とても弱々しく感じられた。
触れれば砕けて散ってしまいそうなその手を、俺は戸惑いながらもゆっくりと、でも確かに握った。
…人に触れたのは、いつぶりだろうか
人から遠ざけて大事に守ってきていた心が、震えた気がした。
他人の体温など、もう随分と感じていない。
「君、手冷たくない?ハッ!もしかして君の方が幽霊だったりして」
「違います。冷え症持ちなんですよ」
確かに俺の手は冷たかった。彼女の体温を、確かに感じとることができるほどに。
いつもは迷惑する冷え症だが、この時ばかりはこいつをありがたく思った。
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