02 少女との出会い

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02 少女との出会い

 暖かな太陽の光に照らされ活気に満ち溢れる往来の片隅で、一人の青年は捨てられていた木箱に頬杖を付きながら道行く人々の持つ食べ物を眺めていた。 「お腹すいた・・・」  思わず本音が漏れてしまったその青年は年齢にして20歳前後、平均よりもやや高い背丈で一見細身に見えるがしっかりと鍛え抜かれており、吸い込まれるような漆黒の髪を目にかからないように横に流しているためなかなかの好青年という印象である。機能よりも見た目に重きをおいた羅紗を主原料する簡素な服装は貴族のものとはどこか違うが上品さという意味では通じるものがある。そのような出で立ちから街を行き交う人々は「こんなところには珍しいどこぞの貴族のご子息か?」と一瞬興味を持つが、腹を空かせてだらしなく木箱にもたれかかっているその姿を見ると「なんだ、ただの変わり者か」とすぐに通り過ぎて行った。     
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