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「女なんだ……」
寂しげに、悲しげな小声で俯くワンコに掛ける言葉が出てこない。
ワンコが、[女]
その言葉が頭の中で反芻されて身動きも取れず立ち尽くす。
目の前の親友とのこれまでの思い出が波のように押し寄せて脳裏を駆け巡る。
それと同時に胸の深層深く押し込めていた感情が頭をもたげて占めてくる。
《ヤバい!》
改めて口にされる[女]だという言葉にワンコを見る目が変わってしまう自分がいた。
戸惑い困惑して堕ちている親友に対して疚しい感情が湧き起こっているなどと、知れたら完全に殺される!
先程までとは別の意味で暴れ始める心臓を押さえ付けるように掴んで、俺は気付かれない内に別れようと後退り掛けた。
「あのな、ユウゴ」
一人焦る俺にワンコは俯けた顔を上げてきた。
ビクつき固まる俺の前で青白かった顔に血色の良い色を頬にのせて、潤ませた瞳を向けてくる。
《うがっ?! か、可愛いっ!!》
女だと言われた途端に意識してしまった目を向けられてはワンコだってキレてしまう!
見てはいけない!
そう思い目を逸らす俺にワンコはすうっと深呼吸をして伸ばした腕の先で拳を握った。
横目にして見ていた俺は《終わった》と諦めの覚悟を決めた。
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