第1章

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俺とワンコが出会ったのは大学の新歓コンパだ。 数十人もの男女入り雑じるその中で、ワンコは少しハニカミ気味に浮き足だった様子で居心地悪そうに男共の中に座っていた。 「あの、俺ユウゴ、君は?」 周りの男を掻き分けて隣を陣取り、そんな在り来たりな台詞しか浮かんでこなくて、それでも近付きたくて掛けた言葉に、ワンコは大きな目を細めて睨み付けるように眺め、 「……ハジメ」 と答えてきた。 女にしてはハスキーな声に間近に見るその顔が可愛くて、「彼氏いる?」なんて言ったのが悪かった。 笑顔で問い掛けた俺の左頬に有無を言わさぬ右ストレート。 バキッ!という鈍い肌を撃つ音と激痛が襲う。 床に倒れ込み何が起きたのか思考の追い付かない俺の見開いた視界で、ワンコは椅子を弾いて勢いよく立ち上がり、 「表に出ろ……二度とその口利けなくしてやる」 とドスを効かせてきた。 鬼の形相で見下ろしてくるワンコを唖然として見詰めていた俺は、その時初めてその服装と体が男物である事に気付いた。 「オレは男に興味はねぇっ!」 ……それがワンコの常套句だとも知る。
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