第1章

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ホロ酔い気分で俺と後輩の先をぴょんぴょん跳ねて歩いていたワンコに、 「暇なら遊ばない?」 なんて声を掛けてきた男を鼻血噴出状態で顔面痣だらけにした[ワンコ]こと[ハジメ]は掴んでいた男の胸ぐらを突き放した。 「おーい、終わったかぁ~?」 騒動に興味津々でざわざわと眺めていた観衆の中から投げ掛ける言葉に、ワンコはくるりと振り向き息を整えながら額から流れる汗を腕で拭って頷く。 ワンコとはあれ以来4年の付き合いとなる。 大学を卒業して其々就職しても男同士として仲の良い関係ではあるが、時折(女だったら)と思わずには要られない時がある。 ワンコは幼い頃から『可愛い息子』を心配した父親に空手などを習わされ、並みの男より強く育ったのだが、その姿は男らしさとは益々以て無縁。 気を抜くと目の前が眩むほど可愛く見え、その度に俺は自分の頭を殴る。 だから夜空に向かい感傷に浸る事などよくある事。 ワンコに知れる事がないように、いや、ワンコだって俺と同じ『男に興味はない』のだから胸の奥底に眠らせたときめきなど忘れるに限る。 でなければ、『ワンコと親友』などと口には出来なくなる。 友情だからこそ、ワンコは俺と気兼ねなく自分を晒して付き合ってくれるのだ。 互いに求めるのは異性。 だけど、ワンコが女と付き合っているところなど、見た事も聞いた事もない。 告られた事くらいあるらしいのだが……。
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