第1章

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ワンコはその見た目からよく女と勘違いされて誘いを掛けられる。 ワンコは同性として遊びの誘いにのるが、ワンコが男だと判ると誘ってきた輩から暴言を吐かれ、最悪、襲われる事もあるほどだ。 その度に応戦して暴れてしまうという悪循環。 遣り過ぎだと思うが、ワンコにすれば『気色悪い』奴らの目を覚まさせる行いだそうだ。 「ユウゴ、ちょっと……」 ナンパしてきた男共が痛む体を支え会いながらとんずらこく姿を見送っていた俺の前に、歩いて戻って来たワンコは俯き加減に呟いた。 [ハジメ]が何故[ワンコ]なのか? 中学高校時代から繰り返してきた凶行に付いた二つ名が[狂犬]、チビで狂暴な子犬だ。 名前の漢字が[一]一文字で、ワンコにボコられて皮肉った輩が[ワンコ]と呼び始めた。 ソイツは今でも友達だがな。 何故だかワンコと喧嘩した相手はその後でも険悪な関係とならない事が多い。 [女扱い]さえしなければ、ワンコは普通に気の良い奴なのだ。 「どうした? どっか怪我でも……」 「…………痛……ぃ!!」 怪訝に思い首を傾げる俺の前でワンコは血の気の無い顔色をしてよろめき、力無く倒れ込んできた。 「お、おい、ワンコ?!」 暴れて倒れる事なんて今までに一度もない。 崩れ落ちるワンコの腕を掴み、支えながら膝着く俺に、ワンコは玉汗を流して歪めた顔を覗かせる。
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