第1章

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夜間窓口へと飛び込み怒鳴り付けるが如く捲し立てると、カウンターの中にいた常駐警備員のおっさんが顰めっ面のまま対応してくれた。 俺の慌てっぷりと、抱えたワンコの真っ青な顔に噴き出した汗を目にして急患であると内線を繋いでくれたお陰で人気の無い建物の中、開け拡げられた処置室へと足音を響かせて雪崩れ込む。 白衣を着た中年の医師が白いベッドに横たわるワンコを手際よく診てくれる。 ワンコは小さく呼吸を整え、幾ばくか落ち着いた様子を見せていた。 処置室には女の看護師と医師、俺とワンコの4人しかいない。 医師は難しい顔をして唸り、看護師に向かって 「急いで結果を報せるように伝えてくれないか」 と採血をした管を手にする看護師を追い立てた。 ワンコはぐったりとして虚ろな状態だし、医師は語らないしで俺は不安を募らせる。 心臓がバクバクと壊れたように暴れた。 他にも検査するからと追い出され、それから直ぐに俺は待合室で待つように言われてから落ち着き無く長椅子に腰掛けていると、2時間近く経ってからふらつきつつも処置室からワンコが出て来た。 「ワンコ?」 不安と心配とで震える声を押し殺して、努めて平静な声で呼び掛けるとワンコは青白い顔のままヘラリと笑顔を作って見せた。 それから更に数十分後、 「あー……取り敢えず、説明しますので入ってもらえますかね?」 という医師の言葉に2人して顔を見合わせ、不安気なワンコの背を押して医師の待つ診察室へと向かった。
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