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「お前、冷たい」
「昔は、あんなに可愛かったのに」
昔は、可愛かったんじゃない。
可愛く見せてた、だけ。
「じゃ、ねー、せんせー」
「ばいばぁい」
一緒にいても、意味がないので、帰る。
木綿は、バッグをもって、さっさと理事室を後にする。
まだ、カナダにいた頃。
お父さんとお母さんがいて。
お兄ちゃんの翔もいて。
涙がじわりと出る。
自分は日本人学校に通ってた小学生で。
お兄ちゃんの友達の高校生の和樹に、算数の宿題を教えて貰ってた。
簡単な算数だと、誰かに聞けよって、あっさり断られるから、一番難しそうなのをいつも持っていった。
公式を一切使わない、小学生の算数問題は、パズルやクイズのようで、その時間だけ、和樹は、自分のものになった。
「Kazuki」
黒髪のカナダ人が、声をかけて来た。
英語で、何してるの?というと、和樹が、ああ、算数の宿題見てあげてる、と応える。
カナダ人高校生は、日本人よりも、胸もあって、和樹が彼女に夢中なのは、すぐ、わかった。
「Ah,i wanna ask ya about our works.」
「OK.Should we start it now?」
「if ya could.」
和樹が、ごめん、また、今度。と言って、彼女と一緒に行ってしまう。
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