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すると、目の前に小さい子が喜びそうな、手作りの貝殻の首飾りが、壁に飾ってあるのが見えた。確かあれは、俺が幼稚園児の頃に、咲にあげたものだ。
『高橋なんて嫌いだ!高橋が人気ものだから、みんな、俺の事、全然見てくれないんだ!』
そういえば昔の俺は、まだそんな事で悩んでいたな。逆恨みも良いとこなのにな。
『高橋がいなかったら、きっと桜先生は僕のお嫁さんになってたのに!』
桜先生とは俺の初恋の人だ。当時先生達が、大きくなったらどの生徒と結婚したいか、なんて事を話していたのを、俺はたまたま聞いてしまった。そこで先生達は、迷わず皆高橋の名前をあげた。
あー、懐かしいな。昔は高橋にもよく嫉妬していた。けど、どんなに努力しても高橋には勝てないと分かってから、いつからか俺は嫉妬をしなくなった。
「俺はやっぱ高橋には勝てねえよな」
「なんで?」
俺が柄にもなく、昔の事を思い出し、感傷に浸っていると、後ろから声が聞こえてきた。
振り向くと、目元だけ布団から出した咲と目があった。
「狸寝入りとかずりいぞ」
「今起きた」
くそ。相変わらずタイミングの悪いやつだなぁ。
「忘れろ」
「ん」
そう言って俺は再び咲に背を向けた。弱音聞かれたとかださすぎる。まぁ、聞かれたのが咲で良かったけど。
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