47人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
「なんか用?」
「んー、なんとなく」
「ふーん」
「あの首飾り、まだ持ってたんだな」
「ん」
相変わらず布団から出ようとしないまま、咲が俺に声をかけてくる。感傷の余韻が残っているせいで、なかなか開かない口から、ぽっとそんな言葉が出た。
「青。好きだから」
「ああ、そうだったな。お前昔から青好きだよな」
初めて行った海で見つけた青い貝殻。珍しくて咲にあげたら、すげえ喜んでくれて、おばさんが咲のために首飾りにしてくれたんだったな。
ぽん。
ん?そんな昔のことを振り返っていたら、突然頭の上に違和感を感じた。
この感触は、たぶん、咲の手だと思う。
咲に声をかけようとする前に、咲の手が俺の頭を撫で始めた。
少し震えているのか、優しく、壊れ物を触るみたいに俺の頭を触る手が、心地良くて、俺はそのまま身を預けた。
そのまま咲の優しさに浸っていた俺だったが、俺は今、思ってた以上に弱っていたらしい。昔の思い出がまた頭の中に浮かんできた。
「なぁ咲。あのさ、良かったら……」
小さい頃、俺は泣き虫で、そんな俺の頭を咲はよく撫でてくれた。それでも泣き止まない時は咲は優しく、俺の身体を抱きしめてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!