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「よ」
幸が訪ねてきた次の朝、玄関の扉をあけると、そこにはあるはずのない笑顔があった。
少し驚き、その場に立ち止まっている私に、幸は「なあ、早く学校いこーぜ」と声を重ねる。
「ん」
焦がれていた光景が突然目の前に現れ、嬉しくないわけがない。感情の処理に忙しい私がなんとか絞り出したその声に、幸は満足したようで、いつものように元気に色々話しながら、足を学校へと進める。
「そういえばさ」
話の途中幸が歩みを止めた。
つられて私も歩みを止める。
すると、幸が私の方へと近づき、私の耳元に口を寄せたかと思うと
「将来のためにもう少し育てた方がいいとおもうぞ、お前の胸」
と言ってきた。
その瞬間、私は手に持っていた鞄を幸に思いっきりぶつけていた。
「いって!なんだよ、男の貴重な意見をきかせてやったんだから、もっとありがたみを、っていてえ!分かった悪かったって!」
悪いといいながらヘラヘラと笑ってる幸をみて、今度悩んでても無視してやろうと私は心の中で思った。
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