第2章 違和感

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「いらっしゃいませー」 「おー水樹ちゃん。いいねー浴衣、すげぇ似合ってる」 「ほんま?ありがとう。幸君もスーツ似合っとうね。格好いいから目立っとうやん」 「いやいや、俺なんか高橋の足元にもおよばねぇよ」 「そうけ?私は幸君には幸君の魅力がある思うけどね。あ、あそこの席あいみたいやから、案内するねー」 「あ、宜しくお願いしまーす」 その後、早速咲のクラスにきてみた。けど、厨房担当だと言っていた咲は、やはり見当たらなかった。 「抹茶とどら焼きやね?ちょっと待っとってね」 「はーい」 客もそんなに多くなくて、落ち着ける場所で、咲には会えなかったけど、ここにきて良かった。 しばらく店内のBGMを聞きながらのんびりしていると、頼んでたものが届いた。 「ご注文頂いた抹茶とどら焼きです」 「あ、ありが…」 聞こえてきた声が、昔から聞きなれている声で、俺は思わず返事半ばにし、相手の顔を見た。 そこには、浴衣をきた咲が、テーブルの上に商品を並べていた。 まだ俺には気づいていないようだ。 小さい頃に、咲の浴衣姿を一度だけ見たことがあったが、それからなぜか咲は祭にも浴衣を着てこなくなってた。だから、咲の浴衣姿を見るのは久しぶりだった。 咲の白い肌にあった、白い浴衣。咲の好きな青色のりんどうの花が描かれた浴衣は、咲にとてもあっていた。 「ご注文は以上で…」 と、商品を並び終えた咲がやっと顔をあげ、俺に気づいた。 「よ」 咲の普段と違う雰囲気に、ちょっと照れながら、いつものようにそう声をかける。 咲は俺の声かけに返事をする事もなく、失礼しますと小声でいうと、駆け足で俺の前から消え、教室から出て行った。 ちょ!なんで逃げんの?!
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