第2章 違和感

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「じゃーなー幸!」 「おう。お疲れー」 長かった文化祭が終わった。打ち上げも終わり、皆とか解散し、俺は家へと向かった。 楽しい時間が終わっても、その高ぶった気持ちが落ち着かず、俺は真っ直ぐ家へは帰らず、また咲の家によってしまった。 「よ」 「ん」 ドアから出てきた咲は、文化祭の疲れも見せずいつも通りだった。 俺は今日の事だけでなく、咲に会えなかった間にあった事など色々話した。 そして途中で、どうしても聞きたかった事を咲に質問した。 「なぁ、なんで文化祭会った時逃げたんだよ」 「……なんとなく」 その質問に、咲はそう答えた。 何か答えにくい事がある時、咲は必ずこの言葉を使う。 「ふーん。つか、浴衣着んじゃん。俺には着ないっつったのに」 それも気になっていた。咲が話の途中で急に扉を閉めた時、浴衣を着ないと断言していた。もしあの時俺がたまたま休憩になってあそこに行かなかったら、俺は咲の浴衣姿を見られなかった事になる。別にいいけど、他の奴が見るっていうのに、俺が見れないのはなんか悔しい。幼馴染みなのに。 「皆休憩でて、人足りなくて」 「ふーん」 あれ、なんかこれに似た気持ち、昔もなった気がする...。 咲の浴衣姿俺以外のやつらに見られんのがなんか悔しくて、咲に何かいった気が...。 まぁ、気がするだけか。 「私そろそろねる」 「お、もうそんな時間か。じゃ俺もかえろ」 「ん、おやすみ」 「おー」 そんなことを考えていると、咲がそう言ってきたため、俺も家に戻る事にした。 俺は咲の家を後にする前に、少し足を止めた。最後に咲に言いたい事があった。慣れない事だから、言おうかギリギリまで迷ったけど、だけど、言わないと後悔する気がした。 「あ、それと…。文化祭の時着てた浴衣、咲にあってて、良かったと思うよ。...に、にあってた」 最後の言葉は、なんかすげぇ照れ臭くて、小さくなってしまった。咲に聞こえたかは分からないが、小さく「ん」という咲の声が聞こえたから、たぶん聞こえてたと思う。 その後家に帰って俺も布団に入ったが、なかなか心臓が眠る体制に入ってくれなくてこまった。
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