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「悪い咲!500円貸して」
私が幸の前に立つと、開口一番にそんな事を言ってくる馬鹿。
怪訝そうな私の顔に気付いた幸は慌てて言葉を続ける。
「べ、別に無駄遣いするわけじゃねえよ?ただ、腹減ってさ。これからダッシュでパン買ってくるんだよ」
「おー、なんだ幸ー。愛しの彼女の可愛らしい手作り弁当じゃ心は満たされても胃袋は満たされないってか、死ねリア充」
「ちょ、しょうがねーだろ!育ち盛りなんだからよ」
そんな幸の発言に茶々を入れてくる周りにいた男子生徒。
これ以上のやり取りは面倒くさいと思った私は、ポケットから財布を出すと、500円玉を幸に渡した。
「ん」
「お、さんきゅ。すぐ返すから!じゃあまたな」
500円玉を受け取った幸は走って教室を後にした。
「彼女に借りればいーのにな」
「馬鹿、彼女に金借りるとか男としてのプライドがあんだろ」
幸がいなくなった後も話を続ける男子生徒達。
「はあ?けど、彼女の代わりに幼馴染みに金借りるとか性格悪いだろ」
「はぁ、お前幼馴染みに夢見過ぎ。恋愛対象にならねぇ幼馴染みなんて金借りるか物借りるかしか使いみちねぇだろ」
「......まぁ現実はそんなもんか」
「馬鹿お前、河野さんの顔見て納得すんなよ失礼だろ」
私は皆と仲が良い幸と違って、静かで地味な女子生徒。男子生徒達がいう言葉は間違っていないから、特に言葉を返す事もなく自分の机に戻った。
「……安心しろ咲、あいつら今日の部活でしごいとく」
机に戻った私に凄い形相で男子生徒達を見ながらそういう夏希。どうやら彼らは夏希と同じバスケ部員だったようだ。女子バスケ部部長の夏希がそう言うからには冗談では済まなそうだ。私は男子生徒達に心の中で謝っておいた。
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