第3章 気付く

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「咲」 「ん?」 俺が咲の名前を呼べば、咲が優しい声で返事をしてくれる。この声を聞いているのは、俺一人。そう思うと、胸のざわめきが少しずつ落ち着いていく気がした。 「咲...」 「ん」 再び俺が咲の名前を呼ぶと、咲は俺の望む事を理解してくれて、俺に背を向けていた身体を、俺と向かい合う体勢に変え、俺を包みこむように優しく抱きしめてくれた。 胸のざわめきがどんどん消えていく。俺が首元に顔を埋めると。くすぐったかったのか、咲の身体が一瞬跳ねた。それがなんだか嬉しくて、今度は咲の耳元に口を持って行き、軽く息をはいた。 「っ」 今度は大きく咲の身体が跳ねる。その時に漏れた声にもならぬ声が、俺の胸を締め付ける。それがあまりにも甘くて心地よくて、俺はもっとそれを求め、咲の服の下へと手を伸ばした。 「っ!幸?」 驚く咲の声が聞こえる。俺から離れるために、身体をそらせようとするが、それを止めるため、俺は再び耳元に息を吹きかける。 すると咲の身体から力が抜け、声にもならない音が漏れる。その反応が俺を調子にのらせる。俺は咲に触れる手を止めることなく、行為を続けた。 「こうっ……こうっ」 俺に返事を求めるために、何度も俺の名前を呼ぶ咲。だが、今の俺にそれは逆効果で、咲にもっと名前を呼んで欲しくて、俺は返事もせず行為を続ける。 咲の身体は細かく震えながら、力が抜けているため抵抗が全くできていない。俺の名前を呼ぶ声も、いつからか震えていた。
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