第3章 気付く

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ガチャ 「なぁ、飲み物いる?」 すると突然部屋の扉が開き、たけるが中に入ってきた。 たけるはすぐに俺らに気づき、咲の助けを求めるような声に、同意の上での行為ではない事を察すると、俺の頭に枕をぼすんと投げつけた。 「ばか幸。早く咲を離せ。警察呼ぶぞ」 普段の咲に似た優しい声ではなく、低く響く声に、俺は一瞬理性を取り戻し、咲を抱きしめる手を一瞬緩めた。その隙を逃さず、たけるが咲を自分のところへ引き寄せる。すかさず咲を引きとめようとした俺だが、それは叶わなかった。 咲は震えながら、たけるに身を委ねる。 「とりあえず家戻って頭冷やせ幸兄」 放心状態の俺に、たけるはそう懐かしい呼び方で俺を呼びながら、いつも通りの柔らかい口調でそういい、咲をつれて部屋を出て行った。 一人部屋に入り、ベッドに横になる。胸がどきどきと煩く響く。そして頭の中では、俺が今まで感じたことがないくらい色々な感情が渦巻き、全く落ち着かなかった。 俺はなぜあんな行動をとってしまったんだろう。分からない。 咲とは幼馴染。それ以上でも以下でもなくて。 でも、高橋が咲に触れるのを見るのがどうしても嫌だった。なぜだかは分からないけど、俺はいつの間にか行動に出ていた。 感じた事のない感情に振り回されていたが、俺の空っぽの頭はそれに耐えられず、いつの間にかそのまま眠っていた。
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