第1章 変わる

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「じゃーねー咲」 「またね、咲ちゃん」 「また明日」 ホームルームが終わり、友達と別れた私は一人で帰路を歩いていた。 一人でいると、最近考えてしまう。 朝起きて、身支度をして家を出るために玄関の扉を開ける時。私は最近その時間が一番嫌いだった。 だって、玄関の扉を開けても、小さい頃から見てきたあいつの笑顔はないのだから。 けどもっと嫌なのは、その光景に慣れてしまっている自分がいる事。 玄関を開けてもあいつがいない事。非日常だと思っていたのに、これが新しい日常に変わってきている。 今まで、私の日常にはいつも幸がいた。けどこれからは、幸が私の隣にいない日々が日常になる。 幸とは家が隣で、それこそ生まれた病院も一緒だから、言葉通り生まれてからずっと一緒だった。幸はいつも元気。小さい頃から、あの無邪気な顔で笑ってる。人気者……っていうよりは、人気者の隣にいる楽しいやつっていう感じ。けど、だからこそ、幸の周りにいる人はみんなあいつの無邪気な笑顔につられ笑ってしまうんだろう。 比べて私は口下手で、感情表現も乏しい地味な子。そんな私と幸が一緒にいれば目立ちそうだけど、これが意外と目立たなかった。 まぁ幸だからな、と。 自分とは正反対の私という存在を幼馴染みとして大切にしている幸に、皆好感を持っていた。 そんな事を考えていたらいつの間にか家に着いていた。 部活が無い時は、幸と一緒に帰宅したりもしていたけど、それもこれからはなくなるんだ。そう実感しながら、私は重い扉を開け、家に入った。
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