第3章 気付く

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「咲、この間は急にあんな事して、怖がらせてごめん。俺、お前が高橋に盗られるんじゃないかって思ったら、怖くて。それで、いつの間にか咲怖がってんのに無理やり……。けど、そん時気づいたんだ。俺、なんで高橋に咲を盗られたくないなんて思うんだろって、美咲の時はしょうがないって思えたのに、なんで咲の時はダメだったんだろうって」 一度言葉が出てしまえば、今まで貯めてきたであろう言葉が、どんどん幸兄から溢れてきた。 「好きなんだ咲。幼馴染みとしてじゃなく、ずっと咲と二人で一緒にいたいって思うくらい好きだ。俺、咲が隣にいないと、俺らしくいられないんだ。だから、これからもずっと一緒にいてくれ」 そういう時の幸兄は今まで見た事ないような顔をしていた。けれど、まっすぐねーちゃんの事を見つめていた。 それに対しねーちゃんも、幸兄の事を真っ直ぐ見つめていた。そして、まるで何かに耐えるように、ねーちゃん手は強く握られ、小さく震えていた。 その後、ねーちゃんの口が小さく開いた。 「いいの?幸の隣に、ずっと一緒にいても」 やっと聞き取れるくらいの小さな声で、ねーちゃんはそう言う。 「うん。ずっと一緒にいて。咲が俺のこと嫌いになるまで、ずっと俺の隣にいてください」 ねーちゃんのその言葉に、ねーちゃんの目を真っ直ぐみたままそう続ける幸兄。 その言葉を聞き、ねーちゃんは...。 目に涙を浮かべながら、弟の俺も見たことがないくらい、幸せそうな顔で笑った。 その笑顔を見て、幸兄が顔を真っ赤にし、まるで身体中に緊張が走ったように強張った。 「幸兄、待て。早まるな」 「う。わ、分かってる」 そんな幸兄に、この間の過ちは犯させまいと俺はそう声をかけた。 幸兄も流石に気づいていたようだが、幸兄の様子からそんなに俺の待ては持ちそうにない。 そう思った俺は、しぶる幸兄を引きずって一旦幸兄の家へ帰した。
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