第1章 変わる

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ぴんぽーん 「咲ー!お母さん手離せないから、でてくれない?」 「はーい」 夕ご飯をたべ、リビングでテレビを見ていたら、家のインターホンがなった。母にそう言われ、私は玄関へと向かった。 「よ」 「……よ」 扉を開けると、そこには久しぶりにみた幸の笑顔があった。 「わり、今日は急に金借りて悪かったな。これ借りた500円」 どうやら昼に貸した500円をわざわざ返しに来てくれたらしい。 「ううん。ありがとう。それじゃ」 「あ、ちょっと待てよ。実は話したいことがあってさ。お前、あの映画見たいって言ってただろ?実は部活の先輩からその映画のチケット二枚貰ったんだ。来週なんだけど、見に行こうぜ」 まさか今のタイミングで幸に会えると思っていなかった私は、とても動揺していた。その動揺を幸に知られたくなくて、すぐ話を終わらせ、扉を閉めようとしたのだが、幸にとめられてしまった。幸の言う通り、私は映画が好きで、私が見たい映画の話をすると俺もついでに見ると、幸は良く一緒に映画を見に行ってくれていた。幸にとってもそれは日常で、きっと今回も癖で私を誘ってくれたんだと思う。本音を言うと凄く嬉しい。だけど、これから変わるだろう幸のいない日常を想像すると、素直に喜べなかった。 「ちょ。なんだよその反応……。いつもならもっと喜ぶだろ?なんだ、体調でも悪いのか?」 きっとそんな気持ちが顔に少し出ていたのだろう。それを敏感に感じ取った幸はそう私に投げかけてきた。そんな幸に、私はゆっくりと口を開いた。     
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