第1章 変わる

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「なぁ、なんかこの頃美咲ちゃん王子と一緒にいね?」 「あー、確かに。で、それについてどー思うよ、彼氏の幸君は」 「……まぁ、あいては高橋だしなぁ」 放課後のホームルームが終わった後、良くつるむ奴らと適当に話をしていた。そんな中、田中が唐突にそんな事を言ってきた。ちなみに王子とは、俺の親友の高橋のこと。顔良し頭良し性格良し運動神経抜群のパーフェクト人間だ。 「それを言ったら勝てねえよ」 「ああ、あいつには勝てねえな。にしても、お前焼かねえの?彼女王子に取られちゃってるけど」 「うーん。まぁ、やっぱ寂しいわな」 「俺の女に手え出すんじゃねえ!って言ってこいよ」 「おっ!このツモツモ終わったらな!」 「お前らしいな」 田中の言うとおり、美咲はこの頃、何かと高橋と一緒にいる事が多い。文化祭委員で一緒になった事がきっかけだと思う。まぁ俺も仮には美咲の彼氏なわけで、やっぱり寂しいもんは寂しいし、ちょっと悲しい。 けど、相手はあいつだし。内心「やっぱりな」って思ってる。 昔からそうだったんだ。俺はいつも高橋と一緒にいたから、周りにいる子はみんな高橋の事しか見ていなかった。度々バレンタインにチョコを貰ったりもしたが、その大抵は高橋宛か、高橋のおまけだった。だからかもしれない。高橋には勝てない事がわかっていたから、尚更俺は思春期になっても恋愛にはあまり興味を持てなかった。 けど、そんな中初めてできた彼女。高橋じゃなく俺の事を見てくれる子が目の前に現れて、俺はらしくなくはしゃいでいた。だから、美咲が高橋と一緒にいる所をみるようになって、俺は高橋には勝てないと分かりきってるのに、柄にもなく落ち混んでいた。 あー、そういえばこの頃、咲と話してねぇな。
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