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俺は思春期を迎えた辺りから、ずっと本能と勘で生きてきた。 面倒なことは嫌いだし、争いは面倒だけどそれを避けてより面倒になるくらいなら真っ向勝負。 頭の回転は早い方だと思う。 勉強も出来なかったことはない。 ただ、いつも何か足りなかった。 それにイライラしていた。 中学の時の担任に 『おまえ、人生なめてるだろ』 と言われたことがある。 はぁ?と思ったけど、今思えばそうだったと思う。 あの担任は、ある意味俺を一番理解していたのかもしれない。 子供の頃の洗脳はあると俺は思う。 俺は父親の病院を継ぐと思っていた。 両親は医者になることを強制したことないと言うけれど、子供の頃のおもちゃと言えばお医者さんセットだった。 車が欲しいと言えば救急車。 ヘリコプターが欲しいと言えばドクターヘリ。 うちには野口英世の本が3冊ある。 絵本バージョンにひらがなで読めるショートバージョン、そしてハードブック。 つまり、強制はしていないけど、与えられたものに含みは持たれていた。 まんまと俺は医者に憧れ、高校生までずっと医者になろうと思っていた。 それが弟の一言で人生の岐路に立つ。 「兄ちゃん、俺が親父の後を継ぎたい。譲ってくれ」 何でも譲る気弱な弟が、はじめて俺に譲ってくれと言った。 面倒なことは嫌いだし、したいと言うならしてくれたらいいと思った。 そんなに自分が固執してるなんて思いもしなかった。 自分の夢はマインドコントロールだと思っていたから。 解放された俺は自由を楽しんだ。
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