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母親から貰った交通費は使わずに、鈍行でまた東京に戻った。
交通費も惜しかったからだ。
この歳になって、まさかこんなことするくらい自分が落ちぶれるとは思わなかった。
長い時間電車に乗って、外の景色を眺めながら帰ると色々考える。
結に言ったところで状況が変わる訳じゃなかった。
言うべきじゃなかった。
電車の中で小さな幼児が母親に抱かれて眠っていた。
昨日の痙攣した男の子くらいだ。
俺は触れたときのことを思い出して、自分の手を眺める。
何の力も知識もない自分。
虚しかった。
―東京に戻って翌日、消費者金融に金を借りた。
堕ちるとこまで堕ちた。
ここが底辺なのか、まだ底じゃないのかもわからない。
急に不安になり自信をなくした。
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