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結に借りた金で、消費者金融からの借金は全て返済できた。 【返済してきた。ありがとう。今から職探ししてくる】 LINEを結に送った。 頑張れ!のスタンプがすぐに返ってきた。 結が応援してくれてるのはわかった。 とにかく仕事を探そう。 再就職を目指して職探しをはじめた。 何でもいいわけじゃない。 年齢的にも慎重に探して、長く勤まるとこをと思うと難航した。 面接も数件受けたが、手応えもなく、結果は惨敗。 自分自身も何がしたいのかしっくり来なかった。 結の期待に応えてやりたい気持ちと、妥協できない自分の気持ち。 どうにもならなかった。 時間が経つにつれて、疲れてくる。 イライラすると余計に悪循環になるのはわかっているのに、イライラがおさまらない。 自分の人生でこんなに難航したのは初めてだ。 気分転換にと結が外に誘ってくれるが、それさえもストレスに感じた。 外に連れ出して、また頑張れってことか? そんな風にひねくれて考える。 ―そんなある日、とうとう気持ちは爆発した。 「一輝、本当は何かしたいことがあるんじゃないの?」 「はっ?」 わかったように話す彼女の発言が俺のイライラを高ぶらせる。 「昔やりたかったこととか、なりたかったものとか…頑張れそうな何かあるんじゃない?」 煩い。 ベットに上に座っていた俺は、頭にきてその場にあったクッションを掴んで勢いよく投げた。 クッションは結をかすめて、用意してくれていた夕食が広げられた机に落下。 夕食は見事に散乱した。 「黙れ!!」 結の発言全てが俺のイライラを刺激する。 しゃべるな、偉そうに。 しゃべるな、ペラペラと。 指図するな。 その気持ちがおさまらず、俺は立ち上り結の胸ぐらを掴む。 「うるせぇんだよ!!」 そう叫ぶと結は震えた声で謝った。 怯えた顔で俺を見上げる。 結の震えが、掴んだ胸ぐらから伝わる。 その姿に我に返る。 結を放して、俺はベットに入って頭から布団を被った。 こんなつもりはなかった。 自分の行動に驚く。 結が謝らなかったら…殴っていたかもしれない。 暫くすると、カチャカチャと割れた皿を片付ける音と共に、結が声を圧し殺して泣いているのがわかった。 それでも、俺は、ベットから出れなかった。
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