14/21

2950人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
財布にはもうほとんど金は残っていなかったが、有り金を使ってコンビニで酒を買って家に戻った。 時間を置いたら酔いがさめる。 そうならないように、次に次にと飲んだ。 学生時代ホストをしたこともあった。 その時みたいに摂取するように飲んだ。 さっきの女を思い出す。 「ヤっとけば良かった」 そう後悔するくらい、見た目はいい女だった。 結の存在が俺にブレーキをかけたが、惜しいことをした。 大体、俺のストレスは結からきてる。 発散させる為にちょっとくらい良かったかもと思わなくもなかった。 母親みたいなことばかり言いやがって。 最近いつ、結を抱いただろうか…。 思い出せない。 突然、インターフォンが鳴る。 誰か来た。 ゆっくり立ち上がり、玄関のドアを開ける。 結が立っていた。 「こんばんは」 笑顔を向けてそう言われても、俺は笑えなかった。 俺は何も返さずに部屋に入り、ベットサイドにもたれて座る。 また小言をいいに来たのか? アポなしでやってきて、俺を監視しに来たのか? 「こんなに飲んだの?」 キッチンからごみ袋を持ってきて片付け出した姿に、苛立った。 「何しに来た?」 「一輝に会いに来た」 会いに来たのに掃除か。 結局こいつは、今の俺を責めている。 「何のために?」 金を俺に貸したことで、優位に立ったつもりか? 「一輝が心配で」 こちらを向きもしないで、片付けながらそんなセリフを吐くな。 俺は感情を抑えられず、結を突き飛ばす。 ガシャンとグラスが割れる音。 結は床に伏せていた。 簡単に突き飛ばせた。 結はゆっくりと起き上がる。 「帰れよ」 俺はそう言い放つ。 ポタポタと彼女の手から、血が床に落ちるのが見えた。 それでも結は、苦痛に耐える顔で首を横に振る。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2950人が本棚に入れています
本棚に追加