17/21

2950人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
――…… 結が起きて着替えている気配で、俺は夢から覚めた。 彼女は俺の側に来て、俺の前にしゃがむ。 目を合わせた。 「一輝が手当てしてくれたの?ありがとう」 そう言って結は微笑んだ。 なんでだ? どうしてこんな俺に優しく出来るんだ? 「礼なんて言うなよ。俺が怪我させた」 結は眉を下げて、俺の膝に置いている右手を彼女の左手が包んだ。 結の手は温かい。 その手の温度さえも優しくて、自分の醜さを痛感する。 「仕事もなくて、大金借りて、乱暴して怪我させて…俺、どうしようもないな……」 もう、自分が嫌で仕方ない。 下を向いて込み上げてくるものを隠す。 「結…俺なんて…捨てろよ」 俺の言葉に、結はギュッと手を握り締めた。 「側に居させて…」 涙が溢れた。 こんな男、格好悪い。 自分でもわかっていた。 だけど、彼女にはそれを隠せなかった。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2950人が本棚に入れています
本棚に追加