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――……
結が起きて着替えている気配で、俺は夢から覚めた。
彼女は俺の側に来て、俺の前にしゃがむ。
目を合わせた。
「一輝が手当てしてくれたの?ありがとう」
そう言って結は微笑んだ。
なんでだ?
どうしてこんな俺に優しく出来るんだ?
「礼なんて言うなよ。俺が怪我させた」
結は眉を下げて、俺の膝に置いている右手を彼女の左手が包んだ。
結の手は温かい。
その手の温度さえも優しくて、自分の醜さを痛感する。
「仕事もなくて、大金借りて、乱暴して怪我させて…俺、どうしようもないな……」
もう、自分が嫌で仕方ない。
下を向いて込み上げてくるものを隠す。
「結…俺なんて…捨てろよ」
俺の言葉に、結はギュッと手を握り締めた。
「側に居させて…」
涙が溢れた。
こんな男、格好悪い。
自分でもわかっていた。
だけど、彼女にはそれを隠せなかった。
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