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―結が仕事に出ると、また一人になる。
シーツや服についた血を、結は洗って出てくれた。
ベランダでその干されたシーツが風になびくのを、俺はじっと見ていた。
あんなことはなかったみたいに、シーツは真っ白になっていた。
あれは夢だったのだろうか…
そう思いながらシーツを眺めて、視線を部屋の中に戻す。
見渡すと、床の絨毯に血の痕を見つけた。
夢なんかじゃない―。
俺は立ちあがり、キッチンにあるタオルを濡らしてその血の痕をゴシゴシと拭く。
丸い跡が擦ることによって大きくなる。
擦っても擦っても、消えない。
俺は必死に擦り続けた。
「消えろ…」
どんなに力を入れて擦っても、消えない。
「なんでだよ」
昨夜のことが鮮明に脳裏に浮かぶ。
「消えてくれよ!」
手に痛みを感じるくらい擦る。
「消えろよ!!」
タオルを床に投げつける。
絨毯の血の痕は、染みになっていた。
消さない現実。
俺は立ち上がって冷蔵庫からビールを出す。
そして開けて勢いよく喉に流し込んだ。
半分ぐらいをいっきに飲む。
こんなんじゃ足りない。
もっと飲んで気を沈めたかった。
俺はまたアルコールを飲んで現実から目を背けた。
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