18/21

2950人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
―結が仕事に出ると、また一人になる。 シーツや服についた血を、結は洗って出てくれた。 ベランダでその干されたシーツが風になびくのを、俺はじっと見ていた。 あんなことはなかったみたいに、シーツは真っ白になっていた。 あれは夢だったのだろうか… そう思いながらシーツを眺めて、視線を部屋の中に戻す。 見渡すと、床の絨毯に血の痕を見つけた。 夢なんかじゃない―。 俺は立ちあがり、キッチンにあるタオルを濡らしてその血の痕をゴシゴシと拭く。 丸い跡が擦ることによって大きくなる。 擦っても擦っても、消えない。 俺は必死に擦り続けた。 「消えろ…」 どんなに力を入れて擦っても、消えない。 「なんでだよ」 昨夜のことが鮮明に脳裏に浮かぶ。 「消えてくれよ!」 手に痛みを感じるくらい擦る。 「消えろよ!!」 タオルを床に投げつける。 絨毯の血の痕は、染みになっていた。 消さない現実。 俺は立ち上がって冷蔵庫からビールを出す。 そして開けて勢いよく喉に流し込んだ。 半分ぐらいをいっきに飲む。 こんなんじゃ足りない。 もっと飲んで気を沈めたかった。 俺はまたアルコールを飲んで現実から目を背けた。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2950人が本棚に入れています
本棚に追加