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―玄関に入ると、二人ともびしょびしょで頭からバケツの水を被ったみたいだった。 水を吸った彼女の衣服は、うっすら透けている。 電気をつけなくても、外からの明かりで十分わかる。 それがまた俺の男の部分を刺激する。 とりあえず靴を脱いで上がるように促す。 「風呂入れてくる」 彼女にタオルを渡して、俺は風呂場にお湯をはりに行く。 浴槽に栓をして、自動湯はりのボタンを押すと俺は玄関のあるダイニングに戻る。 彼女は1DKのダイニングには居らず、奥の部屋の扉が開いていた。 ズボンのポケットからスマホのお知らせ音が鳴ったけれど、俺はそれも気にせずに部屋の方へ移動する。 暗いままの部屋に入り、一瞬居ないのかと思うと、彼女は後ろから俺に抱きついてきた。 部屋の扉が閉まる音― 彼女は笑っていた。 「何?」 酔っていて二人とも足元が覚束無い。 笑いながら二人でじゃれ合い抱き合うと、彼女が俺の服の中に手を入れる。 ひんやり冷えた手が背中に当たる。 「あったかい」 そう言って俺の胸に顔を埋めた。 豊満な胸が俺の身体に添う。 彼女は寒さからか少し震えていた。 「風呂は?」 そう聞いてみる。 「寒いから…あたためて」 そう言われて、何かに火がついたように身体があつくなる。 俺は彼女をベットに押し倒した。 まさぐるようにキスをして、まさぐるようにお互いの衣服を脱ぎ捨てる。 冷えた身体で互いに温め合うように、肌を密着させて求めた。 結とは違う匂い。 結とは違うフォルム。 結とは違う感触。 結とは違う声。 結とは違うタッチ。 そのどれもに興奮した。 誰かなんて関係なかった。 ただ、俺を求めるその手が声が身体が…俺を夢中にさせる。 だから気づかなかった。 風呂が沸いたお知らせ音も、 外が大雨になっていたことも、 結からの着信も、 結が来たことさえも―
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