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―ガチャ 扉の開いた音に、俺は動きを止めた。 扉の方を見ると、人が居る。 目を細めてよく見る。 「…結?」 荒い呼吸を抑えて、確かめる。 夢なのか現実なのかまだ理解できないでいる。 ドタドタっと結の持っていた荷物が床に落ちて、バックや買い物が床に散乱する。 「…ど…して……」 震えたような怯えたような、結の声で現実だと理解する。 ヤバい。 言い訳も取り繕うことも出来る状況ではない。 身体の熱がいっきに冷めていく。 とりあえず話さなければならない。 俺はベットから出て、結の側に寄ろうとすると、彼女は逃げるように部屋を飛び出て行った。 「結!!!」 伸ばした手は届かず、呼んだけど彼女は止まらなかった。 俺は辺りに脱ぎ散らかしていた衣服を身に付ける。 「彼女?」 その声にハッとして、ベットを見る。 女は布団を纏い、起き上がっていた。 俺は部屋の間接照明のライトをつけた。 女は眩しいのか、目を細める。 床には買い物袋から野菜や果物が散乱し、結の鞄も落ちていた。 現実だ。 幻でもなければ、夢でもない。 一番見せてはいけないものを見せた。 「追いかけるの?」 カギや財布をズボンのポケットに身に付けてると、目がなれたのか、女がこちらを見て問い掛けてきた。 「あぁ…」 「そう…大事なのね…」 彼女はそう言って少し笑った。 そして彼女も衣服を身に付けはじめる。 俺は身に付けた財布をもう一度手にする。 「悪い。タクシー代出すから」 財布を開けると、1枚だけ入っていた1万円札を取り差し出す。 着替えを済ませた彼女は、1万円札を受け取る。 「インターフォンの音も耳に入らないくらい夢中で抱いてたくせに、酷い仕打ち」 女はそう言って1万円札にキスして、俺を上目使いで見た。 インターフォンの音… 気づかなかった。 「私、彼女に殺される?」 冗談ぽく女が俺に問い掛ける。 「そんなタイプじゃないよ」 そう言うと女はクスクス笑う。
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