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「だと思った」 女はそう言って荷物を持って玄関に向かう。 そして、玄関にある傘立てから適当に傘を選んで出て行った。 一瞬にして静かになった部屋。 暫く二人が出て行った玄関の方を見つめて、ハッとした。 財布をポケットに仕舞い、スマホを取り出す。 結に電話するけれど、コールだけで取らない。 窓に目をやり、外を見ると、大雨。 俺は結に何度も電話をかけながら、探しに行こうと玄関に移動する。 結の靴が目に留まる。 靴も履かずに飛び出したのか…? その心情に、結がいっきに心配になった。 俺は傘を持って、家を飛び出した。 外は、前も見にくいほどの大雨。 傘を差して結に電話をかけながら、彼女の姿を探す。 結が残して行ったハンドバックからスマホの着信音もバイブ音もなかったはずだ。 スマホは持ってるはずだ。 でも、何度かけても出ない。 俺はそれに苛立つ。 「出ろよ!!」 苛立ちをぶつけるように声に出したけれど、雨の音で掻き消される。 そんなこと言える立場じゃないことも理解しているけれど、苛立ちがおさまらない。 「結!!!返事しろ!!」 声を上げてもただ雨の音しか聞こえなかった。 傘をさしていても意味がないほどの大雨。 この中を靴も履かずに、きっと金も持っていないはずだ。 近くに居るはずだと思うけれど、どこにも居ない。 「結!!結!!」 見つけたところで、どう説明する? 出来心。 別に心変わりとかそんなのじゃない。 名前も知らない、女だった。 家にあげたのは間違いだった。 こんなヘマは普段ならしない。 俺は一帯何をしてるんだ。 もう、どうなってるのか自分でもわからなくなっていた。
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