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―結が戻ってきたのは、朝の9時過ぎ頃だった。 下の階から声がすると思ったら、階段から上がってきて少し先で結と目が合った。 すぐに逸らされる。 「結どうしたの?」 結の後ろから出てきたのは内野舞だった。 内野舞と居たのかと、ホッとして、俺は結に近づく。 内野舞は結の前に出てきて、俺の前に立ちはだかる。 彼女の目から放たれる不信感。 結から話を聞いているようだ。 面倒だが仕方ない。 「結に話がある」 そう言って内野舞の後ろに居る結を見たが、その後ろに居る男の姿が目に入った。 内野舞の旦那じゃない。 スラッとした高身長の30代後半くらいの身なりの綺麗な男だ。 結が話していた男かもと、ピンとくる。 昔から勘はいい。 「今日は無理よ。昨日の今日で話なんて出来る精神状態じゃない」 なぜか内野舞が俺に言う。 「俺は結に聞いている」 内野舞を見ずに、結を見て言うが、彼女は下を向いたまま俺を見ない。 「そんな状態じゃないって言ってるの」 部外者が二人も居て邪魔な上、一人は喚く。 面倒過ぎる。 「部外者だろ」 「部外者が入らなきゃいけないくらいの状態にしたのは誰!?」 こんな時、女の部外者は邪魔でしかない。 正論を並べてくる。 これ以上進展は見込めないのは明白だった。 俺は持ってきていた結のハンドバックを結に差し出す。 「話せるようになったら、連絡してくれないか?」 結は顔を上げないままハンドバックに手を伸ばす。 だけど一瞬触れた俺の手に、すぐに手を引っ込めた。 ハンドバックは床に落ちた。
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