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―ピンポーン… 2度ほどインターフォンで呼び出すとオートロックが解除され、すぐに2階の結の部屋に急ぐ。 ドアを開けてくれた結の顔は、強ばっていた。 「今日来ると思わなかった…」 彼女はそう言って苦笑いをした。 結は部屋着で素っぴん、おまけに髪の毛もまだ若干濡れていた。 結からの連絡に、俺は飛び出てきてしまった。 「連絡が来たからすぐ話せると思って」 俺は正直に話して、その言葉に結の表情が少しゆるんだ。 玄関のドアが閉まる。 二人きりの空間。 結は俺から目線を部屋にうつして、キッチンへ向かう。 「お茶いれようか…」 俺はその行きかけた結の左手を慌てて掴んだ。 すぐに言わないといけない。 「結、悪かった…傷つけて、ごめん」 真っ直ぐに目を合わせて言う。 「もう絶対にしないから。何もかも上手くいかなくてむしゃくしゃしてて」 「一輝…」 結は許してくれる―そう思っていたけど… 結の首は横に振られた。 「結」 まさかの反応に俺の心が乱れる。 「一輝…」 どうして? 今まで結が俺を見捨てるなんてことなかった。 「結、頼む」 お前まで、俺から去っていくのか? そんなことないだろ? 言わないよな? 「…私…と…別れて」 想定外の言葉に、身体中が熱くなる。 結の手を離したくない。 なんでそうなる? 聞き間違いか? 「別れて下さい…」 追い討ちをかけるようにハッキリと結は言葉にした。 結の手をはなして、俺は意味を理解できずに呆然とする。
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